8月15日のモノローグ 槇小奈帆　＜全国商工新聞「随想」 ９月８日号より＞ 　 　中２の時の担任は田代先生といった。ある日、「幸せなんて知らない、そう思っている者は手をあげなさい」 　 と、言い出した。殆どの 生徒がソロソロと挙手を した。すると先生は、 「そうか･･･。それではこ れから教室を封鎖します。全員、トイレに行くこと を禁止するッ！」 　しばらくするとみんな の顔つきが変わり、教室 は大騒ぎとなった。 　 「教室封鎖、解除ッ！」 先生の号令で、私たちは 一目散にトイレ目指して ダッシュしたのだった。 　一段落して、先生が静か に話し始めた。 　 「どうだった？　あ〜、 良かったって思ったか？ 幸せってナ、そういうも のなんだ。普段は気がつかないものなんだ」 　 　あの時は何がなんだかわからなかった。時折、 私はこの突拍子もない先生の仕掛けを心新たに思い返す。身近なことを比喩に、先生は大切なことを子供たちに教えた。それは自由や平和にも置き 換えることが出来る。 　コンサートの時、私は いつも『人生は美しい』という歌で締めくくって いる。先輩の古賀力さん の訳詞だ。少年だった古賀さんは佐世保で空襲に 遭った。防空壕を襲う炎の爆風に怯えながら「夜よ明けろ、朝の光が見たい」と叫び続けたという。生還した朝、見なれていたはずの空の何という美しさ、生きている喜びと 共にこの悲劇を二度と次世代に繰り返させてはならないと、この訳詞に思いを込めた。戦争の酷さや愚かさを語り継ぐ人々も、年々少なくなっていく。歌い継がなければ・・・。 　今年の８月15日は冷夏や豪雨、地震など災害続きのさなかだった。バカンスで来日したフランスの友人達は、京都・奈良の前に広島・長崎を訪ねたいと、ごく自然に語る。 それにしても、あの抜けるような青い夏空と白い雲が、今年ほど恋しく感じた年はない。 ←マキの気まぐれページ　トップへ 槇小奈帆HPトップ イベント情報｜プロフィール｜マキの気まぐれページ｜マキのシャンソン教室 CD BOOK SHOP…ネレイス（ルパン3世、峰不二子テーマ曲ラブ・スコール収録）はこちら 関連記事および寄稿など｜ プロデューサーはあなた！｜ラブスコール誕生秘話おすすめ 槇小奈帆つれづれブログおすすめ｜YouTube動画配スタートNEW このホームページの無断転載・複製を禁止します。 Copyright (C) 槇小奈帆ホームページ　Maki's Room