前略、お許し下さいませ　槇小奈帆 　 　皆さん、お変わりありませんか？　あと少しで2004年を迎えます。今年は冷夏で季節がひとつ少なかったせいでしょうか、1年がとても早く感じます。30歳を過ぎると、１年が坂道を下るように早く感じると言われます。40歳を過ぎると駆け下りるように感じ、50代になると転げ落ちるよう…になり、60代以降は崖から飛び降りるよう…になるんだそうです。世の中はますます厳しい形相となり、経済大国日本はいよいよ運命の「橋」を渡ります。歌、歌ってていいんかしら…、心の中は煮詰まってきておりましたので、仕事を兼ねた今回の九州の旅は、今年一番のプレゼントでした。 　 11月28日、10数年ぶりの鹿児島入り。上空から桜島の武骨な雄姿が見えたときは胸が熱くなりました。鹿児島には思い出が山とあります。かつてはシャンソニエ「ソワレ・ド・パリ」の黒木社長のご好意で長期滞在をさせてもらい、この地で詩を書きました。ルパン�V世の峰不二子のテーマもここで生まれました。仕事が終わると朝の海が見たくなって、よく錦江湾の防波堤にタクシーを飛ばしたものです。アルフレッド・ハウゼ氏からプレゼントされた曲に、「哀しみのセレナータ」という詩を書かせてくれたのは錦江湾の黎明です。Ｂ面に井上ひさしさんの「ストリッパーの子守唄」を収録したドーナツ盤、２代目のマネージャーと売り歩いたっけ…。もう遠い遠い昔話です。ブレルの「懐かしき恋人たちの歌」も「愛し合わなくて良かった」も、ブレヒトの「溺れた乙女のバラード」もこの地で書いて、ジァンジァンの舞台にかけました。私のマグマがこの地の底のマグマに共振するのか、鹿児島は私にとってカンフル剤とも恩人とも言える土地なのです。今は静かに白煙を上げている桜島も、あの頃は盛んに灰を降らせていました。市内は昼間から真っ暗、夏の猛暑にコートを着て傘をさし、マスクにゴーグルです。目に鉄粉が紛れ込もうなら、痛くてたまったもんじゃない。でも、雪を頂いた桜島ときたら、この世のもんじゃないぐらい美しい。船を出してもらって釣りにもよく行きました。あの海は原始の海で1メートル近い鯛（嘘じゃないったら！）が釣れるんです。それにタコがネ…、最高なの〜ッ！！ 　ソワレ・ド・パリの加藤和子さんから大隈半島の鹿屋に誘って頂きました。絶景で知られたステーキハウスがクローズして、そこを今、ご主人と息子さんでログハウス風の自宅にリホームしています。杉の皮を手漉きで剥ぎ、グラインダーで磨き上げる。細かな木の粉が立ちこめて作業が終わる頃には体が真っ白になるんだって。庭からもリヴィングからも、錦江湾と両手を広げた薩摩半島が見えるの！　左手にうっすらと開聞岳、右手には穏やかにあぐらをかいている親父みたいな桜島。日が暮れて太陽が薩摩半島に沈むころ、空が妖艶に燃えてきて、虫たちは最終楽章のページをめくります。アノネ、その日は11月30日。２年前の11月30日の夕暮れ時といえば、私はオーチャードホールの楽屋で出番を待っていた時間です。あの喝采もなにもかにもが、遠く遠く感じました。 　鹿屋から熊本経由で島原へ。島原の水屋敷は、是非、訪ねたかったところでした。市役所近くの商店街のなかにあって、毎秒５０リットルという水が庭からこんこんと湧いています。縁側に座っていると不思議な次元に迷い込みます。山の向こう側はあの普賢岳。激しさと静けさ、残酷さと優しさ…、九州は生命を感じられるところです。 　アラアラ、ページがなくなっちゃった。今年も沢山の御声援、ありがとうございました。ともかく、1月16日のマンダラのコンサート、頑張りま〜す！　来年もどうぞよろしくお願い致します。 ←マキの気まぐれページ　トップへ 槇小奈帆HPトップ イベント情報｜プロフィール｜マキの気まぐれページ｜マキのシャンソン教室 CD BOOK SHOP…ネレイス（ルパン3世、峰不二子テーマ曲ラブ・スコール収録）はこちら 関連記事および寄稿など｜ プロデューサーはあなた！｜ラブスコール誕生秘話おすすめ 槇小奈帆つれづれブログおすすめ｜YouTube動画配スタートNEW このホームページの無断転載・複製を禁止します。 Copyright (C) 槇小奈帆ホームページ　Maki's Room